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数週間前までのつわりが嘘だったように、妊娠5ヶ月(日本では6ヶ月)に入った私はバリバリ食べている。我ながら異常な食欲だと思う。日本の妊娠本を見ると、体重増加は妊娠期間を通して8Kg〜10Kgに押さえるようにと書かれている。太りすぎると出産時に胎児が産道を通れない(脂肪が付きすぎて)とか、妊娠中毒症にかかって産後も高血圧やむくみに苦しむとか、とにかく妊婦の肥満は百害あって一利無しという事らしい。一方、フランスの妊娠本によれば、体重増加は12Kg〜14Kgが理想とか。
友人の奥さんは、14Kg増えたがBebeと一緒に全部産み落としたとかで、今はまったくスリム。別の知り合いは、なんと25Kg増えたにも関わらず産後半年で元の体重だとか。こういう話を聞くにつけ、日本人とフランス人はやっぱり別物だと思ってしまう。
妊娠本 西・東
体の構造も多少違うんだろうが、妊娠・出産に対する考え方も日本とフランスでは少し違うように思う。まず妊娠本を読み比べてわかるのは、日本のそれが情報量に勝るとも劣らぬくらい妊婦を精神的な面からも支えようとしている内容なのに対して、フランスの出産本は医者が読む専門書かと思うくらい医学的だ。具体的な例を挙げると、日本の出産本には必ず「良い母親になれるか心配です」とか「夫が思ったほど喜んでくれないのですが、良い父親になるのか心配です」とか、その手の相談コーナーが設けられていて、答えの方も「胎児の動きを感じたりしながら、徐々にみんな母親になって行くのですよ」という風にとても親切だ。さらに、日本の出産本の良いところは、実際に妊娠・出産を経験する女性を密着取材する「実録物」が多くて写真も多くなかなか参考になる。ただあまりにも懇切丁寧に妊婦に起こりうるあらゆる問題点をくまなくカバーしているため、どれか一つぐらい当てはまらないと逆に自分はおかしいのではないかという不安を抱かせるほどだ。
フランスの出産本には、妊婦の悩み相談コーナーなどは無い。一般的なフランス語の本と同じく写真が少なく文字が多い。(写真が一枚も載っていない旅行ガイドブックやレストランガイドを想像して欲しい。フランスでは一般的だが、日本の親切本に慣れている私には、多色刷り印刷の費用をケチっているのか?と疑ってしまう)フランスの出産本には、子供の性別が決まるしくみは、XXYなど遺伝子レベルの話まで紹介していてちょっとしたお勉強になるが、実際の出産にどう役立つのかは不明だ。妊娠中毒症に関しての記述はどこにも見あたらないし、妊婦が採るべき食事に関しては、栄養士でなきゃわかんないような栄養素一覧が載っているだけである。ちなみに日本の本には「妊婦にお勧めの料理レシピ集」まで載っている。
日本は赤ちゃん第一、フランスは・・・ママ第一!?
日本はとにかく赤ちゃん第一。例えば授乳期間に関してはおよそ1年とある。赤ちゃんが泣いたら、抱き癖が着くなんて事を気にせずどんどん抱いてスキンシップを図れと書いてある。一方、フランスの義母は言う「授乳?そうねぇ、A(夫)の時は結局お乳は出なかったし、弟の時は2ヶ月、妹の時も2ヶ月だったわ。」と随分授乳期間が短かったようだ。私の担当医師は「母乳をあげたいですか?粉ミルクにします?」と聞いてきた。私が当然母乳で育てるつもりだと答えると「それは良い選択ですね」と感心された。フランスでは、最初から粉ミルク一本で行く母親も多い。その理由は簡単だ。母乳を飲ませている期間は、数時間ごとに授乳しなくてはならないので、母親は夜も何度も起きなくてはいけない。粉ミルクに変えれば飲ませる量を調整できるので、赤ん坊は夜ぐっすり眠り、当然母親も熟睡できる。産後2ヶ月で、職場復帰が当たり前のフランス女性はこうして、日本より大分早めに授乳を打ち切る。ところで日本の友人は産後一年目に授乳を辞めた時の辛さ(まるで赤ん坊と引き裂かれるようなと言っていた)を切々と私に訴えたが、フランス人はそういう母親と赤ん坊の情みたいな物が日本人より希薄なのだろうか??
ちなみに、フランスでは夜泣きした場合最初はあやしてお乳を上げる事もあるが、数ヶ月経ったら一晩中放っておく(!!)のだという。すると、赤ん坊も翌日からは諦めて(!!)泣かなくなるとか。まだまだ母性本能も何もない私でも、産まれて間もない赤ん坊にこのやり方は過酷ではないか?と思ってしまう。夫にこの件に関して意見を聞いた所「母乳断ちは、子供に初めて経験させるこの世の不条理。つまりこの世の中には自分の思い通りには行かないこともあるって事を解らせて我慢を経験させる大切な儀式なんだ。(つまり早めの断乳に賛成という事)」との事。ちなみに、フランス式の育児方法で育った夫がニッポン男児に比べて格段我慢強いとか、そういう事は全然無い。フランス育児はとにかく「私(ママ)第一主義」のような気がする。
無痛分娩が当たり前なのも
フランスの分娩の仕方で主流を占めるのが無痛分娩なのも、きっとこうした「私(ママ)第一主義」と無関係では無いと思う。母胎への負担が少なく産後の回復も早いからだ。あくまでもナチュラルを良しとし今も自然分娩が一般的な日本に対し、フランスは陣痛がピークに達する直前に下半身に部分麻酔をかけ、意識はあるが痛みは感じない(どういうしくみなのか、それでも母親がいきんで産む事はできる)無痛分娩が主流だ。無痛分娩を経験した女性によればふわふわした暖かい湯船に浸かっているような感覚の中、はっきり産まれてくる子供の事も確認できて最高の分娩だったという。でも日本では良く「お腹を痛めて産んだ子」と言うではないか。無痛分娩のせいで母性本能が湧かなかったらどうしようと、私は結構悩んだ。担当医は、「痛いか痛くないかでは無く、母子共に無事に出産を終える事が大切」という。それはそうだ。だったらこのフランスでは間違いなく無痛分娩が良いに決まっている。なぜなら医者も助産婦も病院スタッフも、無痛分娩の方に慣れているのだから。私は安全第一という意味で、無痛分娩を選ぼうと思う。