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「デモとかストとか言ってないで」。うちの母は私が子供の頃に「でもぉ〜」と口答えするとこんなフレーズで返してきた。実際この言葉の意味がわかったのはずーっと後である。なぜなら私が生まれる直前に、日本は高度経済成長期に突入し、私が物心ついた80年代、日本の社会からはすでにゼネストやデモはほとんど消えていたからだ。85年には電電公社がNTTになり、1987年には国鉄の分割民営化が始まった。そして今、郵政民営化である。紆余曲折があったにせよ、電電公社と国鉄の民営化は大多数の日本人の目に成功と映っていると思う。もし民営化がバブル崩壊の後だったらいったいどれだけの税金をつぎ込んでこうした国営企業の負債を処理しなくてはならなかったか、と思いぞっとする。そしてこうした民営化の過程を横目で見ながら育った私たちの世代は、「会社」っていうのは「企業努力」をして、「客」を一杯つけて「儲けないと生き残れない」のだ。という事をほぼ常識として受け入れてきた。
そんな日本に生まれ育った私にとって、フランスの現状はまさに驚くべきものだ。二日前からSNCMという国有のフェリー会社がストに突入。ちなみにこのフェリーはフランス本土とコルシカ島を結ぶ唯一の水路。なぜストに入ったかというとSNCMが民間会社に売られる事になったので労働者が怒っているのだ。怒り狂った労働者はフェリーを占拠し大海原へ抗議の船出という行動に出た。それを追いかける海上警察のヘリコプター。TVで繰り広げられる大スペクタクル。
実はフランスではこの手の出し物(スペクタクル)は日常茶飯事だ。SNCF(国鉄)や、エール・フランス、学校の先生、郵便局、その他諸々の公務員たちがしょっちゅうデモやらストやらをやっている。万年赤字のSNCF、その退職手当をちょっとでも減らそうと政府が発表するやいなやフランス中の交通網は麻痺する。全面ストだ。
でも、と私は思う国営フェリーは国の経営が悪くて儲からなかったから民間に売られる事になったのだし、SNCFの退職者手当を減らすのは毎年莫大な赤字を出しているからじゃないか。しかし公務員天国(520万人いる)のフランスでは、こんな意見を言おうものなら袋だたきだ。
「きみはなんてリベラルなんだ」と、まず政治的にレッテルを貼られてしまう。(アメリカではリベラルとは、保守・コンサバティブに対する革新派の事。ブッシュ=保守(コンサバ)=右派であり、ケリー=リベラル=左派となるのだが、ここフランスでは全く違いリベラルな人とは、フランス式の福祉国家を否定し、アメリカ式の実力主義(税金の引き下げ、民営化推進)を良しとする人=右派という意味。)そして「いいかいパブリック・サービス(公共サービス)は儲けるために存在しているんじゃない。(なんだか今回、謀国の選挙で聞いたような台詞だ)国民が困らないようにあるんだ」と。
私は言いたい。赤字を税金で穴埋めしなきゃいけないような事態を生み出す事自体国民を困らせているじゃない。と。さらに、そのパブリック・サービスとやらのサービスの悪さと来たら世界一だ。郵便局では毎回一枚の切手を買うのに30分並ぶ。もちろん切手の自動販売機もあるが、だいたいが壊れているか、小銭しか使えないような代物だ。速達で出された物が一週間経って届く。地下鉄の駅は薄汚く、ホームには係員一人立っていない。
共産圏が崩壊した原因を、資本主義の国フランスで見るとは、という感じである。給料が死ぬまで保証されている(逆の言い方をすれば、規定以上の給料は出ない)という状況に置いて人はこれだけ労働意欲を失い、怠惰になってゆくものなのだ。と。では、非公務員の国民が自分たちの税金が赤字穴埋めに使われている事に怒るかというと答えはNonだ。問題の責任はいつでも政府にある。国営企業の赤字問題も社会福祉費の維持も、一向に下がらない失業率問題も、フランス人にとっては政府が考えれば良い事なのだ。国民は政府に向かって文句を述べるためにデモでもしていればいい。
政府なんて実態があって無いような物に頼らず、自分の頭と体をフルに使って稼ぎたい、会社を大きくしたい、その稼ぎでもっと良い生活がしたいと思う人間はいないのだろうか。(私が知っている限り、そういうハングリー精神旺盛な人間はほとんどが外からこの国にやってきた外国人だ)フランス人に今一番必要なのは本当の意味での勤労の喜びを知る事なんじゃないかと思う。SNCMの人たちに教えて上げたい。日本では国鉄も電話も民営にして莫大な利益を出すようになったと。
そして、うちの母にもう一度言って貰いたい「デモとかストとか言ってないで、働け!」と。もちろんフランス人に向かって。
数週間前までのつわりが嘘だったように、妊娠5ヶ月(日本では6ヶ月)に入った私はバリバリ食べている。我ながら異常な食欲だと思う。日本の妊娠本を見ると、体重増加は妊娠期間を通して8Kg〜10Kgに押さえるようにと書かれている。太りすぎると出産時に胎児が産道を通れない(脂肪が付きすぎて)とか、妊娠中毒症にかかって産後も高血圧やむくみに苦しむとか、とにかく妊婦の肥満は百害あって一利無しという事らしい。一方、フランスの妊娠本によれば、体重増加は12Kg〜14Kgが理想とか。
友人の奥さんは、14Kg増えたがBebeと一緒に全部産み落としたとかで、今はまったくスリム。別の知り合いは、なんと25Kg増えたにも関わらず産後半年で元の体重だとか。こういう話を聞くにつけ、日本人とフランス人はやっぱり別物だと思ってしまう。
妊娠本 西・東
体の構造も多少違うんだろうが、妊娠・出産に対する考え方も日本とフランスでは少し違うように思う。まず妊娠本を読み比べてわかるのは、日本のそれが情報量に勝るとも劣らぬくらい妊婦を精神的な面からも支えようとしている内容なのに対して、フランスの出産本は医者が読む専門書かと思うくらい医学的だ。具体的な例を挙げると、日本の出産本には必ず「良い母親になれるか心配です」とか「夫が思ったほど喜んでくれないのですが、良い父親になるのか心配です」とか、その手の相談コーナーが設けられていて、答えの方も「胎児の動きを感じたりしながら、徐々にみんな母親になって行くのですよ」という風にとても親切だ。さらに、日本の出産本の良いところは、実際に妊娠・出産を経験する女性を密着取材する「実録物」が多くて写真も多くなかなか参考になる。ただあまりにも懇切丁寧に妊婦に起こりうるあらゆる問題点をくまなくカバーしているため、どれか一つぐらい当てはまらないと逆に自分はおかしいのではないかという不安を抱かせるほどだ。
フランスの出産本には、妊婦の悩み相談コーナーなどは無い。一般的なフランス語の本と同じく写真が少なく文字が多い。(写真が一枚も載っていない旅行ガイドブックやレストランガイドを想像して欲しい。フランスでは一般的だが、日本の親切本に慣れている私には、多色刷り印刷の費用をケチっているのか?と疑ってしまう)フランスの出産本には、子供の性別が決まるしくみは、XXYなど遺伝子レベルの話まで紹介していてちょっとしたお勉強になるが、実際の出産にどう役立つのかは不明だ。妊娠中毒症に関しての記述はどこにも見あたらないし、妊婦が採るべき食事に関しては、栄養士でなきゃわかんないような栄養素一覧が載っているだけである。ちなみに日本の本には「妊婦にお勧めの料理レシピ集」まで載っている。
日本は赤ちゃん第一、フランスは・・・ママ第一!?
日本はとにかく赤ちゃん第一。例えば授乳期間に関してはおよそ1年とある。赤ちゃんが泣いたら、抱き癖が着くなんて事を気にせずどんどん抱いてスキンシップを図れと書いてある。一方、フランスの義母は言う「授乳?そうねぇ、A(夫)の時は結局お乳は出なかったし、弟の時は2ヶ月、妹の時も2ヶ月だったわ。」と随分授乳期間が短かったようだ。私の担当医師は「母乳をあげたいですか?粉ミルクにします?」と聞いてきた。私が当然母乳で育てるつもりだと答えると「それは良い選択ですね」と感心された。フランスでは、最初から粉ミルク一本で行く母親も多い。その理由は簡単だ。母乳を飲ませている期間は、数時間ごとに授乳しなくてはならないので、母親は夜も何度も起きなくてはいけない。粉ミルクに変えれば飲ませる量を調整できるので、赤ん坊は夜ぐっすり眠り、当然母親も熟睡できる。産後2ヶ月で、職場復帰が当たり前のフランス女性はこうして、日本より大分早めに授乳を打ち切る。ところで日本の友人は産後一年目に授乳を辞めた時の辛さ(まるで赤ん坊と引き裂かれるようなと言っていた)を切々と私に訴えたが、フランス人はそういう母親と赤ん坊の情みたいな物が日本人より希薄なのだろうか??
ちなみに、フランスでは夜泣きした場合最初はあやしてお乳を上げる事もあるが、数ヶ月経ったら一晩中放っておく(!!)のだという。すると、赤ん坊も翌日からは諦めて(!!)泣かなくなるとか。まだまだ母性本能も何もない私でも、産まれて間もない赤ん坊にこのやり方は過酷ではないか?と思ってしまう。夫にこの件に関して意見を聞いた所「母乳断ちは、子供に初めて経験させるこの世の不条理。つまりこの世の中には自分の思い通りには行かないこともあるって事を解らせて我慢を経験させる大切な儀式なんだ。(つまり早めの断乳に賛成という事)」との事。ちなみに、フランス式の育児方法で育った夫がニッポン男児に比べて格段我慢強いとか、そういう事は全然無い。フランス育児はとにかく「私(ママ)第一主義」のような気がする。
無痛分娩が当たり前なのも
フランスの分娩の仕方で主流を占めるのが無痛分娩なのも、きっとこうした「私(ママ)第一主義」と無関係では無いと思う。母胎への負担が少なく産後の回復も早いからだ。あくまでもナチュラルを良しとし今も自然分娩が一般的な日本に対し、フランスは陣痛がピークに達する直前に下半身に部分麻酔をかけ、意識はあるが痛みは感じない(どういうしくみなのか、それでも母親がいきんで産む事はできる)無痛分娩が主流だ。無痛分娩を経験した女性によればふわふわした暖かい湯船に浸かっているような感覚の中、はっきり産まれてくる子供の事も確認できて最高の分娩だったという。でも日本では良く「お腹を痛めて産んだ子」と言うではないか。無痛分娩のせいで母性本能が湧かなかったらどうしようと、私は結構悩んだ。担当医は、「痛いか痛くないかでは無く、母子共に無事に出産を終える事が大切」という。それはそうだ。だったらこのフランスでは間違いなく無痛分娩が良いに決まっている。なぜなら医者も助産婦も病院スタッフも、無痛分娩の方に慣れているのだから。私は安全第一という意味で、無痛分娩を選ぼうと思う。
妊娠5,6週目で、つわりが始まった。母が私を産んだ時も、相当にひどいつわりを経験したと聞いていたので、その娘である私もきっと・・・と覚悟をしていたのだが、実際始まるとそれはそれは想像以上につらい日々だった。
さっそくDr.Bulum(担当医)に気持ち悪くて何も食べられないと訴える。
すると、ドクターは、はいはい。という感じで薬の処方箋を書いてくれた。プロキニルという吐き気止めの薬だ。日本の出産本にはつわりはとにかく耐えて乗り切るしかない。母胎が順応すればつわりは収まるのだから。というような事が書かれていたので、お薬が出るとは思っても見なかった。ちなみにこの薬、効いたのか効かなかったのか正直なところ解らない。薬を飲み始めた後も、私は毎日のようにおえ〜っとやっていたが、母親から聞いていた症状(水も飲めなくなって、しまいに入院とか)に比べれば随分ましな事は間違いないからだ。
妊婦の50%以上が経験するこのつわり、その原因は未だに医学的には解明されていないという。「恐らく」という但し書き付きで説明されていたのが以下のようなものだ。
「妊娠すると妊婦の体の中に大量につくられる黄体ホルモン。これを作り出す部分が嘔吐神経(吐き気を感じる部分)の近くにあるために、そこが刺激されて起こるのではないかと言われている」
そんな中、一番頼りにしている出産本「はじめて出会う育児百科(小学館)」(押しつけがましくなくて本当にお薦めの一冊です)にあった説明が興味深いものだった。曰く
「胎児の能力は驚くべき物。胎盤が完成する4ヶ月から5ヶ月に入ると胎児は、吸収する栄養の取捨選択が可能になる。それ以前は、母親が口にする物がほぼストレートに胎児に行くわけで、それを知っている胎児は妊娠初期に警告アラート(つわり)を鳴らして母親に食べ物に関して注意を促している。」
そう言われて納得。というのも、私は元来体が丈夫でいたって健康優良児。そんな過信も手伝って妊娠前(特に東京にいた頃)は、ほとんど自分が口にする物に気を遣っていなかった。仕事柄、夜中に高カロリーの物を食べながらお酒を飲む。タバコもちょっとストレス過多になるとあっという間に一箱軽く吸っていた。そのくせダイエットと言っては、食べたり食べなかったりを繰り返していた。これでは警告アラートを鳴らされて当然だ。
つわりが始まると同時に、タバコが一切吸えなくなった。自分だけならまだしも他人が吸っているタバコのにおいが臭くてたまらない。フランスは愛煙家パラダイスで老若男女問わず町中でみんなスパスパやっている。煙で真っ白のバーやカフェには一歩たりとも足を踏み入れられなくなってしまった。さらに、夫も愛煙家。つわりの辛さを訴えて、台所だけで吸って貰う事にしたが、ちょっとでも煙の臭いが部屋に入ってくると気分が悪い。お酒の臭いも駄目なので、お酒を飲んだ夫がタバコを吸ったその息で話しかけたりしてきた日には、もうグーでパンチである。「身重の妻がこんなに苦しんでいるのがわからないか!」とブチ切れてみたり、アメリカ人になったつもりでいかにタバコが本人の健康にも、私の健康にも、しいては産まれてくる子供にも良くないかを切々と訴えたり。。。本当に夫婦の危機一歩手前という感じだった。
続いて駄目になったのが、鶏肉を焼くにおい。フランスの商店街に必ず一軒はあるブッシェリー(肉屋)。その店先(店内では無く外)には香ばしく焼けた鳥の丸焼きがオーブンの中でくるくる回っている。これがあるともう数十メートル手前から、足が止まってしまう。鶏肉に続いて、フランス料理はことごとく駄目になってしまった。妊娠前はなんともなかった物にこうして過剰反応してしまうのだから不思議なものだ。我が家では、料理は日替わり当番制で作る事になっているが、夫が作るフランス家庭料理(こってり煮込み系)はまったく喉を通らなくなった。仕方なく夫が唯一作ることができるお粥(お粥は自分が病人になった時の為に教えておいた)を毎日作ってもらい食べる。
つわりとは結局の所、「臭覚異常」だと思う。それまでおいしい臭いとして脳に記憶されていた臭いが、気持ち悪い臭いになってしまうのだから。と書くと、「臭いが駄目でも、食べる分には問題無いのでは?」と思われそうだが、さにあらず。
人間が味覚と思っている感覚の70%は実は臭覚なのだ。
ところで「つわりの時期は、食べられる物を食べたいだけ」というのが、妊婦界の常識。で、私がこの時期無性に食べたくなったのは、「日本食」。海外の大都市在住の方ならご存じのように、海外と言えども都会では「日本食」がわりと簡単に手に入る時代。ラーメン屋だって、弁当屋だって、寿司屋だって、讃岐うどん屋だってある。問題はその値段で、パリの日本食食材店ではお米も醤油も味噌も日本の3倍から4倍の値が付けられている。ラーメンは一杯1200円くらい。そんな所で毎日買い物していたら我が家の家計は即破綻だ。。。と頭ではわかっていても、でも、でも、つい、つい、つわり時期の私は何度もパリ・オペラ界隈(日本食レストランや、食材店が軒を連ねる日本人街)へとダッシュしてしまった。日本食大好きな夫には、、悪いが内緒だ。(家計への打撃を少しでも減らすため)
夫が仕事中の昼下がりに、お腹のBebeと一緒に(?)一人で食べる冷やし中華のなんと美味な事か。ハンバーグ弁当のハンバーグもさることながら付け合わせの、ポテトサラダやひじき、ご飯に乗ったたくあん、これらすべてのコンビネーションの完璧な事。つわりの辛さをしばし忘れて心は叫ぶ。素晴らしき日本食。ブラボー!日本食!
やって来たのも突然ならば、去って行くのもある日突然だった。妊娠5ヶ月に入ると吐き気がピタっと収まった。今、私は牛のように食べている(フレンチもOK)。つわりの間3kg以上減った体重が、あれよあれよという間に増えて行く。担当医にも、太りすぎを注意され、そろそろ体重管理・栄養管理を始める時期だなぁと思う今日この頃。
妊娠生活始まり始まり
婦人科と産科がわかれているように、フランスの医療機関は分業化が徹底している。薬は処方箋を持って街の薬局へ。血液検査や尿検査はメディカル・アナライシス・センター(医療検査センター)へ。という事で、婦人科の先生の診察が終わるやいなやまたまた方々の医療機関に電話をかけまくり、検査の予約を入れなくてはならない。すべての医療機関は原則的に予約制。でも、慣れてしまえば日本の病院のように行ってから延々と待たなくて済むのでこの方が合理的だ。
妊娠初期の血液検査、尿検査で調べる事はどこのお国も一緒。血液型検査、貧血の有無、HB抗体(B型肝炎)の有無、性病に感染していないか。など。私も4本ほど血液を採られた。
トキソプラズマって??
一週間後、検査結果をとりにセンターへ行くとまだ結果が出ていないとの事。まぁ万事いい加減さに関しては、世界一のフランスの事なので翌日また出向く。
すると、検査責任者の男性が出てきて話しがあるというではないか。何事かと思い車で待っていた夫も呼ぶ。彼の説明によれば血液検査の結果私はトキソプラズマというウィルスに感染しているという。この感染が、妊娠前のモノであれば免疫抗体がすでに私の体の中で作られているので、胎児への影響は無いが( 例えウィルスが胎児に行っていても、抗体も子供に行っているので問題が無いとの事 )、妊娠後に感染したものであると、子供にウィルスが行ってる場合かなり高い確率で障害が出るという。障害は具体的には水痘性、心臓疾患、聴覚疾患、視覚疾患、流産、死産などかなり深刻なものだ。
初めて耳にするトキソプラズマという言葉や、医師が説明する内容にいったいどうしたら良いのか動揺する。
このトキソプラズマ、日本ではもうほとんど存在しないウィルスらしく検査も任意で行う。しかし、フランスでは妊婦の実に7%が感染しているウィルスだ。上記のように妊娠前にすでにポジティフ=陽性(つまりすでに免疫抗体を持っていれば)心配の必要が無いため、フランスでは結婚前にすべての女性に、抗体の有無を調べる検査が義務づけられている。私は、結婚前に病院で何か調べたな。ぐらいでその検査内容が何だったのか、結果はどうだったかなどはまったく気にしていなかった。
「私はいったいいつ感染したのか?」
家に飛んで帰って結婚前に行った検査結果を引っ張り出す。(関係ないが、こういう時だけは何でもかんでも物をとっておく夫で良かったと思う)
結婚前の抗体検査の結果は、なんとネガティフ(陰性)。。。。
つまり、結婚後から妊娠までの間に私は、このトキソプラズマとやらに感染したのだ。
残念な結果を再び検査センターに報告する。センターではさらに、トキソプラズマ専門の血液検査センター(そんなものが存在する事自体フランスがトキソ大国だという事を物語っている )に私の血液を送り、感染時期をさらに詳しく調べる事になった。
妊婦は何を食べたらいいの?
ところで、このトキソプラズマ。普通の人間がかかっても、大して恐ろしいウィルスでは無い。特に目立った病状が出るわけでも無く、現に私も今回の検査で初めて感染している事に気が付いたのだ。
トキソプラズマというと、日本では犬や猫から経口で感染すると思われている事が多いが、フランスでは犬・猫に加え多くの食物からの感染が考えられる。
トキソプラズマの抗体を持っていない妊婦が口にしてはいけない物は膨大な数になる。
ざっと挙げただけでも、半生の牛肉、半生の羊肉、半生の馬肉、土のついた野菜(トキソは土の中にもいる)、牡蠣など生の魚介類、生乳入りのチーズ類、生の魚類、ソーセージ類etc.... こんなリストを見て私は感染経路を真剣に考えるのが馬鹿らしくなってしまった。グルメ大国フランスでは(個人的には日本食の方が、繊細でグルメだと思うが)あらゆる肉類を半生で食べるのが常だ。なぜならフランスのスーパーには薄切り肉という物が売っていない。牛も羊もガーンと一塊りで売られている。(ちなみに鶏やウサギは一羽まるまる・・・)こういうお肉は、中までじっくり火を通した日には堅くなりすぎて全然おいしくない。生焼けぐらいがちょうど良い。そうでなくても生ものが大好きな私は、ちょうど妊娠初期と考えられる時期に、羊の半生も、馬肉ステーキの血が滴っているものも食べた。
でも、フランスの妊婦さん(トキソにかかっていない)は、常にこの危険な食べ物リストを気にしながら9ヶ月を過ごさなくてはならないのだ。
トキソへの感染が確定してしまった私の元に、さらに最悪な報告が届いた。精密検査の結果感染がごく最近のものらしいという。
担当の婦人科医の指示で、私はトキソプラズマを専門とする医師(これも別の病院)に送られる事になった。さらに、まだ胎児にウィルスが行っていないケースも考えられるため、今後の感染を防ぐためにローバマイシンというかなり強い抗生物質を朝晩飲む事になった。しかし、すでに胎児にウィルスが行ってしまっていたら・・・
まだ妊娠3ヶ月に入ったばかりという時期に私と夫は、かなり最悪なケースも想定しなくてはいけない事になった。という事で、この夏はまさにトキソとの闘い&悪阻との闘いとなってしまったのだが、続きはまた別の機会に。
次回は、フランスならではの妊婦メニュー(今度は食べられる話)をします。
産科と婦人科は別物です・・・!?
妊娠したかな?と思ったら、産婦人科へGo。日本の妊娠本いわく「長い事お世話になる産婦人科。納得いく出産にする為にも、産婦人科選びは慎重に」とある。病院選びの目安として挙げられている項目に目を通す。
★ 自宅から近くいざという時にすぐ行ける距離か。
★ 夫立ち会いの出産、ソフロロジーなど自分がやりたいと思っている出産方法を実践してくれる病院か。
★ 病室、トイレなどが清潔で、手入れが行き届いているか。
この他、出生率低下が著しい日本ならではの事情という感じで、病院側のサービス(例えば退院時のプレゼント)、入院中の食事(レストラン並みのフルコースを出すところもあるらしい)、病院内の施設充実度(美容院併設なんていうところも!)などなど、思わず結婚式場選びでもするような感覚に捕らわれる。でも、買い手市場という意味では日本はかなりの妊婦天国と見た。
さて、こちらフランスはやっぱりちょっと事情が違った。まず、産婦人科ではなく、婦人科と産科が別々に存在する。Gynecologie( ジネコロジー )と呼ばれる婦人科医は、妊娠の確認と定期検診を担当し、いざ生まれますという時には、Obstetrique (オブステトリック )という産科医が担当する。婦人科と産科では病院がある場所も別々だ。この方式に私は当初かなりとまどった。9ヶ月もの間、定期的に母子の状態を見てくれる先生が、いざ出産という時にいないなんて不安だ。
しかし、しばらくして事情が飲み込めてきた。つまり、妊娠の確認や定期検診を必要とする妊婦があちこちにいるのに対し、さぁ今日が出産です。という妊婦の数は限られている。出産用の設備が整った産科病院は一カ所にまとめてクリニックとし、定期検診用の婦人科は大きな設備も必要無いし、他の科(小児科や内科、外科)もある総合病院の中に入れましょう。もしくは街の開業医でもいいではないですか。という事なのだ。
すべての婦人科医は、産科病院と提携していて連絡も密にしてくれるので、時期が来たら決められた産科に通う事になる。中には産科、婦人科両方を担当している先生もいてそういうラッキーな場合は、妊娠当初から担当してくれていた先生が、出産当日には産科病院に出向いきて立ち会ってくれる事もある。
病院探しも楽じゃない・・・!?
という事で、私も早速ジネコロジー(婦人科)の先生を探す事に。フランス語がパーフェクトではない私は、夫に頼んだ。
私としてはインターネットの口コミ情報や、妊娠本などを参考に評判の良い婦人科を探して欲しかったのだが、夫はいきなり電話帳で近所にある婦人科の病院に片っ端から電話をかけ始めた。しかも、なんだか電話の口調から次々に診察を断られている感じ。。。「一番早くて可能な診察は、10日後だって」と夫。
出生率低下に悩む日本では考えられないかもしれないが、ここフランス(特に私が暮らすパリ地区)では、婦人科の数が足りないというのが現状だ。妊娠してから気が付いた事だが、フランスでは大都会パリといえどもあちこちで子供を見かける。
石を投げればベビーカーに当たるほど(?)だ。80年代に、やはり出生率低下問題を抱えていたフランスでは、国が積極的に出産援助金(アロカシオン デュ ジョンダンファン=妊娠期間中から子供が3歳になるまで受給が可能)を出すなどして、子育てを奨励してきた。そうした事に加え、マグレブと呼ばれる北アフリカ地域からの移民や、アラブ地域からの移民の多くは伝統的、宗教的な理由から6人、7人と子供を産む。こうした子だくさん移民の問題は別として、フランスでは90年代後半から再び出生率が上昇し2002年の時点で1.9人となっている。対して日本は同じ2002年の時点で1.4人を切りその後も下降の一途を辿っている。(ちなみに、GDP内で子育て支援のための公的資金の占める割合は、フランスで2.8%、日本はなんと0.6%だ。少子化に歯止めをかけるなら、政府もお金をケチっていては駄目だという事がよくわかる)
子供が増えるのは良いことだが、パリ市内の婦人科はどこも満員状態。妊娠前に、病院探しをしないと。という友人の言葉もまんざら冗談では無かったようだ。
ようやく見つかった婦人科は、自宅から車で10分のところにある小さめの総合病院の中にあった。担当医はとってもジェントルマンな、Dr.Blum。私にとって非常にラッキーだったのは、英語も流ちょうに話す先生だった事だ。
次回は、フランスの妊婦が気を付けなくてはいけないちょっと変わった注意事項などを紹介します。